パンツ装着!
ここはいわゆる剣と魔法の世界。
人間と様々なモンスター、精霊、神々等が共存し
日々不思議な現象や奇妙な事件が発生している。
そしてこの世界には天よりタロットカードの称号を承った者達が存在する。
彼等は世界を導く鍵を握っているとされ絶大な力を持っている。
これはそんなタロットの名を冠する者達の物語である。
「そろそろ私も世に出る頃ね…」
とある人気の無い山奥の山荘の中で一人の少女が何か調べ物をしていた。
少女の外見であるが肩に掛かるかどうかぐらいの銀髪で瞳は金色、肌の色は浅黒い。
身に付けている物は頭には紫の宝石が埋め込まれ左右に触角のような装飾品が付いたティアラ、
上半身には赤い首当てと裾の近くの幾何学的な模様が特徴の短く黒いマントであり、
他には今は壁に立てかけている赤い杖を愛用している。
魔法使い風の恰好といったところだがここに一つ重大な問題がある。
少女はこれらの装備品以外は何一つ身に付けていないのだ。
そして彼女こそタロットカードの1番目「The Magician(魔術師)」の号を承りし者である。
彼女の本当の名前は誰も知らない。
故に以降では彼女を称号にちなみマジシャンと記載する。
「えーっと、こういう時のマナーは、と…」
マジシャンは長い下積み時代を終え、
広い世界に出る為に世の中のルールや道徳、マナー等に関する様々な知識を吸収している最中だった。
彼女は魔法に関しては膨大な知識を持っていたが反面世間知らずで常識に疎かった。
裸同然の恰好がそれを如実に物語っている。そうした面を補うべく彼女は切磋琢磨に学んでいたのであった。
「え、これは…」
ある時マジシャンの表情に変化が表れた。
それは衣服や下着等について調べている時の事だった。
彼女が見た情報には人前で裸を晒す事は公共の場では法律違反、そうでなくともみだりに晒すのは下品であるとあった。
そして世の中の人々は小さい内に裸を見せる事が恥ずかしいと気付く、ともあった。
彼女は自分の下半身に目をやった。
前述の通り何一つ身に付けていない。
今まで接してきた精霊やモンスター達はそんな事気にも止めなかったのだが、
自分の恰好はどうやらはしたなく、恥知らずで、破廉恥なようだ。
マジシャンはそれを知って縮こまりたくなるような、
穴があったら入りたくなるような感情を覚えた。
「まずい…このままじゃまずい…!」
自分の恰好がまずいと知ったマジシャンは自分の丸出しの下半身を隠そうと考えた。
マジシャンはまず床に魔法陣を作成し、それからパンツの形状や材質、自分の身体のサイズを頭に浮かべつつ呪文を詠唱した。
すると魔法陣の中心に光と共に黒いパンツが表れた。
「(ゴクリ…)」
マジシャンはそっとパンツを手に取った。
そして身体をかがめ片足を上げ、パンツの片方の穴におもむろに通した。
続いてもう片方の足を上げてからパンツの反対側の穴に通した。
そしてマジシャンはパンツをするすると上げていき、ついにその下半身をパンツで覆った。
それまで 丸出しだった下半身が今日ついに衣類で覆われたのである。
「(…………!)」
マジシャンは最初に快感を覚えた。
「この感触、気持ちいいじゃない!?」
素肌に程よくフィットする感触にマジシャンは純粋な心地よさを感じていた。
同時に彼女は隠すべき部分を隠す事によって安心感とすがすがしさも感じていた。
先程の恥ずかしさや罪悪感を払拭するかのごとく。
マジシャンは大鏡の前に立ちパンツを穿いた自分の姿を見た。
そしてさらに高揚感を感じた。
「パンツって最高♪パンツって気持ちいい♪」
マジシャンは暫し鏡に映った自分に見とれた後、調子に乗って色々なポーズをとりだした。
その時だった。
マジシャンの動きの勢いで丈の短いマントがめくれ上がり、
胸が見えてしまったのだ。
「………」
マジシャンは一瞬固まった後…
「あちゃー、これもまずいわね…」
自分は女性であり、男性よりも胸を晒す事はまずいと知った彼女は同様にブラも作り、それで胸を覆い隠した。
「んー、これも気持ちいいわね!
もうこれでバッチリね!
恥知らずとは呼ばせないわよ!」
パンツ丸出しで、そして裸足で歩き回るのも十分非常識だがそこは世間知らずの彼女ならではの事。
最低限隠すべき所を隠し安心しきった彼女はしばらく後旅立ちを決意した。
「さあ、広い世界に向けて、出っぱーつ!」
こうしてマジシャンは旅立った。
この旅で何が彼女を待ち受けているのか、
今は誰も知る由はない。
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